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教室紹介

研究のご紹介/骨軟部腫瘍研究グループ

かつては不治の病であった悪性骨軟部腫瘍は、近年の医学の進歩により根治が可能である疾患となりましたが、治療の甲斐なく不幸な経過をたどる例は今でも少なくありません。また生命に差し障りのない良性腫瘍の治療においては、手術を安全に行い、患者さんの機能損失を小さくすることが必須です。

 

当研究グループでは、一人でも多くの患者さんの生命を救うこと、次世代の治療の開発に応用可能な骨軟部腫瘍の生物学的特徴に関する知見を集積すること、治療を安全に行うこと、治療中および治療後の患者さんの良好な生活の質(QOL、quality of life)を維持することを課題として、様々な研究に取り組んでおります。

杏林大学医学部付属病院 整形外科 研究のご紹介/骨軟部腫瘍

(1)一人でも多くの患者さんの生命を救うために

悪性度の高い骨軟部腫瘍を完治するためには、手術に加えて化学療法(抗癌剤)を効果的に使用することが必要です。治療成績向上には、より有効な化学療法投与法の開発が不可欠ですが、骨軟部腫瘍は希少がんであるため、単一施設での臨床研究は不可能です。当施設では日本の代表的がん診療施設から構成された日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の多施設共同研究に参加し、新たな化学療法の開発に寄与しています。

JCOGによる多施設共同研究
  • JCOG0304高悪性度非円形細胞軟部肉腫に対する Ifosfamide,Adriamycin による. 術前術後補助化学療法の第Ⅱ相臨床試験

  • JCOG0905骨肉腫術後補助化学療法における Ifosfamide 併用の効果に関するランダム化比較試験

  • JCOG1306高悪性度非円形細胞肉腫に対するadriamycin, ifosfamideによる補助化学療法とgemcitabine,docetaxelによる補助化学療法とのランダム化第II/III相試験

  • JCOG1610病巣掻爬可能骨巨細胞腫に対する術前デノスマブ療法の. ランダム化第 III 相試験

  • JCOG1802ドキソルビシン治療後の進行軟部肉腫に対する二次治療におけるトラベクテジン,エリブリン,パゾパニブのランダム化第II相試験

当研究グループが自施設内で遂行している化学療法に関する研究
  • 進行期悪性軟部腫瘍におけるSecond line化学療法の有用性の検討

(2)病態生理の解明

希少であることに加えて種類が大変多いため、骨軟部腫瘍に関する新知見を得るためには、多施設共同研究が必要です。当研究グループは国内最大の研究プラットフォームである骨軟部肉腫研究会(JMOG)に参加し、研究を主導するとともに多くの研究プロジェクトに協力しています。また当施設の症例を研究グループ独自に分析し学会報告を行っています。さらに当グループ研究室においては、抗癌剤の有効な投与法を細胞レベルで解析するとともに、各種肉腫組織の遺伝子レベルの情報の集積/解析を行っています。

主な多施設共同研究
  • 本邦における四肢/体幹部脱分化脂肪肉腫の治療成績(Japanese Musculoskeletal Oncology Group共同研究)
    当研究グループが研究を主導し、世界有数の症例数による解析を行い、その治療成績や効果的な手術法を研究しています。
     

  • 骨軟部腫瘍患者に対する腫瘍素因遺伝子および腫瘍細胞における原因遺伝子の網羅的遺伝子解析研究
    骨軟部腫瘍の発生の原因となっている複雑な遺伝情報を多くの施設とともに共同で解析し、疾患の発症メカニズムを解析しています。

当研究グループが自施設内で遂行している研究
  • 悪性骨軟部腫瘍におけるsIL2Rの診断的意義の解析

  • 人工肘関節によって再建した肘関節周囲の悪性骨軟部腫瘍の治療成績

  • 単純性骨嚢腫の治療成績

  • 原発性骨軟部腫瘍における低温条件下での抗癌剤活性増強作用の解析

参加している共同研究プロジェクト
  • 日本における大腿骨骨頭軟骨芽細胞腫の外科的治療

  • 中高齢者原発性高悪性度悪性骨腫瘍の治療成績に対する研究‐骨軟部肉腫治療研究会(JMOG)多施設共同研究‐

  • 大腿骨全置換術に関する多施設共同レトロスペクティブ研究

  • 製造販売後調査データを用いた骨巨細胞腫に対するランマークの治療効果に関する後ろ向き観察研究

  • 悪性骨軟部腫瘍に対する各種処理骨の長期成績に関する多施設共同研究

  • びまん型腱滑膜巨細胞腫の長期成績に関する多施設共同研究

  • 骨巨細胞腫治療におけるDenosumabの意義:後方視的多施設共同研究

  • がん治療関連運動器障害の実態調査 多施設共同研究

  • 高分化脂肪肉腫の超音波エコーレベルと病理所見の対比

(3)安全な医療

骨軟部腫瘍の治療は患者さんの体に負担となることが多く、手術や化学療法における合併症の発生率が他の疾患よりも高いことが知られています。当研究グループでは手術や化学療法を安全に行うため、臨床データを収集・分析しています。

手術部位感染

手術後に細菌などが創で繁殖する(手術部位感染症)と、長期の治療を余儀なくされるだけでなく、悪性腫瘍の治療の遅延につながります。当グループでは全国的な手術部位感染症の実態調査を行い、危険因子の抽出を試みました。その成果は権威ある筋骨格系感染症対策国際コンセンサス会議(2018年フィラデルフィアにて開催)に数多く引用され、エビデンス形成に大きな役割をはたしています。

周術期合併症の研究

悪性腫瘍と良性腫瘍の中間的特徴をもつ骨巨細胞腫はこれまで体系的な合併症の解析がなされてきませんでした。本研究グループでは国内7施設から骨巨細胞腫手術のデータを集積し、合併症発生の実態調査をおこないました。またこの研究結果を踏まえて、自施設での悪性腫瘍手術の合併症の調査を開始しています。

周術期並存症の評価

悪性腫瘍を治療する際に他の病気(並存症)があると手術や化学療法が困難となることがあります。当研究グループでは並存症があることで、悪性腫瘍の治療がどのように影響を受けるかを解析し、より安全な治療を行うための基礎的データの確立を試みています。

(4)よりよいQOLを目指して

骨軟部悪性腫瘍の治療成績が向上するに伴って、治療中治療後の患者さんの満足度を向上させることの重要性が高まっています。本研究グループでは治療期間や治療後の患者さんのQOL調査を立案し、より満足度の高い医療を提供する基礎的データの収集を予定しています。

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